2025-04-09 コメント投稿する ▼
「知らぬ間に情報収集」 刑デジ法案に懸念 本村議員「盗聴法以上の危険性」
4月9日の衆議院法務委員会では、日本共産党の本村伸子議員が、「この法案は、かつて問題視された通信傍受法(いわゆる盗聴法)よりも、個人の人権やプライバシーを脅かす危険がある」と厳しく追及した。
法案では、捜査機関が民間から電子的な記録を強制的に提出させることができる。しかも、提出命令を受けた側が、それが誰に関する情報かなどを知らせる義務はない。そのため、事件に関係のない一般市民のデータまで、本人が知らぬ間に収集される可能性がある。
本村議員は、「提供命令に不服がある人は、準抗告(裁判所への不服申し立て)ができると法務省は言うが、そもそも命令が出たことを本人が知らされない以上、抗告のしようがない」と指摘。これに対し、鈴木馨祐法務大臣も「通信事業者から命令の発出を確認できない場合は、本人が知るのは難しい」と事実上認める形となった。
さらに本村議員は、盗聴法であっても対象者には通知があり、不服申し立ての機会が保障されていることを引き合いに、「この法案では通知さえなく、対象犯罪の限定もない。違法に収集された情報を削除する規定もなく、乱用を防ぐ罰則すらない」と強く批判した。
これに対し、鈴木法相は「この命令は、あくまで既に存在する記録を対象にしており、盗聴のように通信を継続的に監視するものではない」として、法案の正当性を強調している。
しかし、法曹界からも不安の声は根強い。日本弁護士連合会や自由法曹団などはすでに意見書を出し、「電磁的記録提供命令は捜査機関による濫用を招きかねない」「個人情報の保護が十分に担保されていない」と警鐘を鳴らしている。
実際に、日弁連の意見書では、提出命令が出されたことを本人に通知する制度の導入や、対象犯罪の限定、違法取得情報の削除義務の明記などが求められている。
本村議員は「個人情報やプライバシーの保護を、政府はもっと真剣に考えるべきだ」と訴えた。監視強化と人権のバランスをどう取るか。法案の行方とともに、今後の国会論戦に注目が集まっている。
- 刑事デジタル法案で新たに「電磁的記録提供命令」を創設。
- 命令は通知されないため、不服申し立てが事実上不可能な場合も。
- 対象犯罪の範囲が広く、情報収集の歯止めがない。
- 盗聴法にはある抑制措置(通知・限定・削除規定・罰則)がない。
- 本村伸子議員や日弁連などが強く批判、人権侵害の危険性を指摘。
- 法務省は「既存の記録提出に限定されている」と主張するも、懸念は拭えず。