2025-04-07 コメント投稿する ▼
一時保護所への看護師配置、法制化を求め署名提出 こども家庭庁に1,490人分
見えない存在になっている看護師たち
三浦さんはこれまで、現場での看護師の役割が法的に明文化されていないことに疑問を感じてきた。実際には、虐待や心の傷を抱えた子どもたちに寄り添い、薬の管理からメンタルケアまで幅広く担っているにもかかわらず、その存在は法律のどこにも明記されていない。
「専門的な仕事をしているのに、“いないことになっている”ような状況。待遇も低く、仕事の価値が見えづらくなっている」と、三浦さんは話す。
現場は“たった一人”の看護師でまわっている
三浦さんは全国の一時保護所に勤める現役看護師たちにヒアリング調査を行ってきた。そのなかで見えてきたのは、「たった一人で対応している」という共通の実態だ。
中には、精神疾患のある子どもが向精神薬を服用しているケースも少なくない。しかし、薬の専門知識がない職員が管理を任されることもあり、「誤薬や服薬ミスのリスクが高く、非常に危険な状況だ」と三浦さんは訴える。
“義務化”されたが…全施設に配置されるのは2029年
2024年には、ようやく内閣府令で「一時保護所には看護師を必ず置くこと」が定められた。けれども、実際にすべての施設に配置されるのは2029年4月と、5年もの猶予が設けられている。
現在、全国145か所の一時保護所のうち、看護師が配置されているのはわずか82か所。しかも、子どもの定員が20人でも50人でも、常勤の看護師は“1人だけ”というところがほとんどだ。
「人数に応じた配置基準にして、交代制で24時間体制がとれるようにしてほしい」。三浦さんは、子どもたちの安全と健康を守るためには、数の確保が不可欠だと強調する。
国会議員も同行し、政府に見直しを要請
署名提出には、日本共産党の本村伸子・衆院議員も同行。「看護師の配置状況について全国調査を実施し、基準の見直しを検討すべきではないか」と、こども家庭庁に迫った。
しかし、庁の担当者からは「内閣府令が出たばかりなので、まずは実態把握から始めたい」との回答にとどまった。
一時保護所に必要なのは“制度の後押し”
一時保護所は、家庭に戻れない子どもたちの「一時的な避難場所」であり、心と体を癒す場所でもある。そこに看護師が常駐しているかどうかは、子どもの命や未来に直結する問題だ。
必要とされながらも、制度の中で“見えない存在”となっている看護師たち。その働きを正当に評価し、安心して働ける環境をつくるために、今、法的な整備が求められている。