2025-07-01 コメント投稿する ▼
日本企業の海外進出は利益が国内に還元されない?財務省研究会がインドネシアで直面した現実
「日本に利益が還ってこない」現実 インドネシア視察が示した日本企業海外進出の盲点
財務省研究会が示す苦い現実
日本企業が海外進出を進める一方で、その成果が日本に還元されていない現実が財務省の研究会で明らかになった。2024年4月25日に開催された第7回「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」では、「配当は本当に日本に戻ってきているのか」という疑問に対し、インドネシア視察をもとにした具体的な分析報告が行われた。
報告を行ったのは、学習院大学と横浜国立大学の研究者ら。彼らは、東南アジアを代表する新興国・インドネシアを事例に、日本企業の海外事業による利益が「なぜ日本に戻らないのか」を丹念に掘り下げた。
「海外進出しても日本に金が戻らないとか、何のための“日本企業”なんだ?」
「現地再投資ばかりで日本に恩恵ゼロ。その結果が国内空洞化じゃないの?」
「親子ローン返済が先で配当なしって…中小企業はいつまで耐えろと?」
「せめて還流を促す税制優遇とかしないと、ますます出ていくだけ」
「利益が還元されない構造を放置したまま“海外進出を支援”って本末転倒では?」
還元されない理由とは? 地域分散と現地再投資の優先
報告では、日本企業が利益を還流しない理由として、以下のような点が挙げられた。
地域統括型の経営
トヨタのように本社集中型で資金を日本に集める企業もあるが、近年はアジア地域での地域拠点(シンガポール、タイなど)を重視し、そこで資金を集約・再投資する傾向が強い。
ROE重視の経営戦略
企業は個別法人の配当よりも、連結全体での利益や株主資本利益率(ROE)を重視。金融機関などは現地で再投資し、わざわざ日本に資金を戻すことはない。
現地市場の将来性
インドネシアのように人口が多く、GDPの規模も大きい国では、利益を現地で再投資した方が将来のリターンを期待できる。
中小企業の資金繰り
この10年間で期待通りの利益が得られなかった企業も多く、親会社への配当どころか、子会社への融資返済すら継続中という現実もある。
こうした実情により、企業の対外直接投資は増えているにもかかわらず、利益が国内経済に波及せず、「空洞化」への懸念が高まっている。
円はなぜ“求められない通貨”に? 還流の鍵は国内投資
報告では、資金を日本に戻すためには「円を使いたくなる仕組み」が必要だとして、以下の要件が指摘された。
* 円への需要を高める施策
* 円を保有するインセンティブ(低金利政策の見直し含む)
* 日本国内でのR&D(研究開発)などの戦略的投資の増加
* 現地規制や為替制度の改善交渉
日本が「魅力的な投資先」であり続けなければ、企業は収益を国内に戻す動機を失ってしまう。つまり、問題の核心には「日本の経済的魅力の低下」という構造的な課題が横たわっている。
「海外展開支援」だけで済まされない政策の責任
政府は長年にわたり「日本企業の海外展開」を後押ししてきたが、それが日本経済にどれほどのメリットをもたらしているのかについての検証は不十分だった。とりわけ、企業収益が海外で蓄積され、日本国内に循環しないという実態は、財政・雇用・税収いずれの面でも深刻な課題を孕んでいる。
特に中小企業においては、現地での再投資に必要な資金を回収できないまま、本社への還元が困難になっているケースも多く、海外展開がリスクとして跳ね返っていることも少なくない。
今後は、企業が国内への投資を選択できる環境整備や、還流を促す制度的仕組みづくりが求められる。海外進出は決して「目的」ではなく、「手段」であるべきだ。