2025-04-23 コメント投稿する ▼
財務省、介護職の賃上げに慎重姿勢 処遇改善より「選ばれる職場」実現を強調
財務省、介護職の賃上げに慎重姿勢 処遇改善より「選ばれる職場」強調
財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は4月23日、今後の社会保障制度改革について議論を行った。その中で、介護職の賃上げに対して慎重な姿勢を示し、処遇改善よりも「選ばれる職場」の実現を重視する考えを強調した。
介護報酬1%引き下げで1,420億円の抑制効果
財務省は、2024年度の介護保険給付費が約14.2兆円に達する見込みであることを踏まえ、介護報酬を1%引き下げることで約1,420億円の費用抑制が可能とする試算を提示した。これにより、現役世代の保険料負担の軽減につながると説明している。
人材確保は処遇改善だけでなく職場環境の整備を
深刻な人手不足が続く介護業界に対し、財務省は「処遇改善のみで新たな人材を求めるのではなく、既存の人材を大切にしながら、生産性の向上や職場環境の整備などに取り組む事業者が、利用者・職員に選ばれていくことが重要」との見解を示した。また、「今後の生産年齢人口の減少を踏まえれば、介護分野にばかり人材が集中するのは適切でない」と指摘し、介護分野への過度な人材集中を避ける必要性を訴えた。
一律の賃上げではなく、質の向上につながる対応を
業界が求める介護職の賃上げについて、財務省は「一律の対応ではなく、介護事業の質の向上につながる適切なあり方を検討すべき」と主張し、慎重な姿勢を崩さなかった。特に、厳しい経営環境にある訪問介護事業所への支援については、まずは既存の施策を十分に活用すべきと指摘し、全国一律の介護報酬引き上げには否定的な立場をとった。「各地域の人口動態や提供体制の状況を踏まえた対応を行うべき」との考えを示している。
- 2024年度の介護保険給付費は約14.2兆円に達する見込み。
- 介護報酬を1%引き下げれば、約1,420億円の費用抑制が可能。
- 処遇改善のみでの人材確保ではなく、生産性向上や職場環境の整備が重要。
- 介護職の賃上げについては、一律の対応ではなく、質の向上につながる適切なあり方を検討すべき。
- 訪問介護事業所への支援は、既存の施策を十分に活用し、全国一律の介護報酬引き上げには否定的。
財務省のこのような姿勢に対し、介護業界からは処遇改善の必要性を訴える声が上がっている。今後、介護職の賃上げや人材確保に向けた具体的な施策が求められる中、財政と福祉のバランスをどう取るかが大きな課題となる。