2026-03-27 コメント投稿する ▼
経産省が補足文書を検討 M&A「価格ありき」の誤解是正へ買収指針の本意を明確化
「価格さえ高ければ望ましい買収」という誤解が業界内に広まっているとして、指針の本来の意図を改めて明確にする目的があります。 **価格が良くても、買収後に事業が先細ってしまうような提案では企業の価値向上には資さない」と指摘しています。 - 「高い買収価格=望ましい買収」という誤解が広まっているとして、指針の趣旨を改めて明確にする目的。
「価格ありき」に一石投じる 経産省が補足文書を検討
企業間のM&A(合併・買収)が活発化する中、経済産業省は2023年8月に策定した「企業買収における行動指針」の趣旨について、正しい理解を広めるための補足文書の作成を検討しています。「価格さえ高ければ望ましい買収」という誤解が業界内に広まっているとして、指針の本来の意図を改めて明確にする目的があります。
企業買収行動指針とは何か 2023年の指針策定の背景と目的
「企業買収における行動指針」は、上場企業の経営支配権を取得するM&Aにおける当事者の行動のあり方を示したものです。買収提案の評価基準として「企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、または向上させるか」と明記しており、取締役会が「真摯な買収提案」を受けた場合は真剣に検討しなければならないとしています。指針自体に法的拘束力はありませんが、特別委員会の設置や対抗措置の発動など、企業の実務面に大きな影響を与えてきました。
相次ぐTOB合戦 芝浦電子・牧野フライスに見る価格重視の現実
指針公表以降、「同意なき買収」や対抗提案は増加傾向にあります。2025年には温度センサー大手の芝浦電子をめぐって台湾電子部品大手のヤゲオが同意なきTOB(株式公開買い付け)を仕掛け、ミネベアミツミがホワイトナイト(友好的買収者)として名乗りを上げる買収合戦に発展しました。最終的にヤゲオが買収を成立させましたが、競り合いの中でTOB価格が大幅に上昇するなど、価格面での激しい攻防が続きました。
「価格競争になるのは株主にとってはありがたいが、それが企業の長期的な発展に繋がるかは別の話だ」
「指針があっても価格一辺倒の議論になってしまっているのなら、補足説明が必要だと思う」
「TOB合戦は企業の現場を混乱させる。価格だけで判断する風潮には問題がある」
「従業員の離職率や事業継続性を開示しなくていいのは、企業価値の判断として不十分ではないか」
「株主も短期的な利益より長期的な企業価値を重視する姿勢が業界全体に必要だと感じる」
ニデックが牧野フライス製作所に仕掛けた同意なき買収では、TOB価格を1株1万1000円に設定し、牧野株の上場以来の最高値が9600円であることを強調して「指針の言う望ましい買収に該当する」と主張しました。牧野側はニデックに買収後の離職率などの開示を求めましたが、企業価値向上に資するかを判断するための明確な情報は提供されなかったとされています。牧野フライスは買収防衛策を発動し、ニデックは仮処分申請が却下された後にTOBを撤回しました。
補足文書で何が変わるか 企業価値向上を軸にした議論の再構築へ
指針策定に関わった西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は「『とにかく価格が高ければそれでいい』と指針を誤読するケースも目立つが、本意ではない」と語ります。「株主が価格を重視するのは当然だが、全体がそれに流され過ぎている。価格が良くても、買収後に事業が先細ってしまうような提案では企業の価値向上には資さない」と指摘しています。
経産省が補足文書で明確にしようとしているのは、指針における「望ましい買収」の定義です。「望ましい買収」とは「企業価値の向上と株主利益の確保の双方に資する買収」を意味しており、高い株式買い付け価格だけで判断するものではありません。企業価値とは短期的な株価だけでなく、技術力・人材・事業の持続性なども含んだ概念です。補足文書の作成は、価格偏重の買収競争に一石を投じ、長期的な企業価値を軸にした健全なM&A文化の醸成につながる可能性を秘めています。
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まとめ
- 経産省は2023年8月策定の「企業買収における行動指針」に関する補足文書の作成を検討中
- 「高い買収価格=望ましい買収」という誤解が広まっているとして、指針の趣旨を改めて明確にする目的
- 指針は法的拘束力はないが、特別委員会設置など実務に大きな影響を与えてきた
- 芝浦電子(ヤゲオ・ミネベアミツミ)やニデック・牧野フライス製作所など価格重視の買収合戦が相次ぐ
- ニデックによる牧野フライスへのTOBは買収防衛策・仮処分却下を経て撤回に終わった
- 太田洋弁護士「価格が良くても買収後に事業が先細る提案では企業価値向上に資さない」と指摘
- 指針の「望ましい買収」は株主利益と企業価値向上の双方を意味し、価格のみで判断すべきではない