2026-02-24 コメント投稿する ▼
加藤康子氏が鳴らす警鐘:日本の「ものづくり」と脱炭素の現実的な調和とは
加藤氏は、日本の国内総生産(GDP)の約2割を製造業が占め、その中でも自動車産業が外貨獲得の3割を担っているという事実を強調します。 日本政府も2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げていますが、加藤氏はこの急激な変化に疑問を呈しています。 日本の自動車産業の強みは、複雑なエンジンやトランスミッションを作る高度な技術にあります。
日本の製造業を支える「自動車産業」の重要性
2025年12月、内閣官房参与に起用された加藤康子氏は、日本の産業界に強い危機感を抱いています。加藤氏は、日本の国内総生産(GDP)の約2割を製造業が占め、その中でも自動車産業が外貨獲得の3割を担っているという事実を強調します。自動車産業は、まさに日本の経済を支える「最後の砦」です。もしこの産業が衰退すれば、日本全体の経済が崩壊しかねないという強い懸念が、今回のインタビューの背景にあります。加藤氏は、長年全国の町工場を歩き、現場の声を直接聞いてきました。その経験から、数字上の目標だけでなく、現場の「底力」を維持することこそが政府の役割であると訴えています。
「実需」を無視したEVシフトへの懸念
現在、世界中でカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)への動きが加速しています。日本政府も2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げていますが、加藤氏はこの急激な変化に疑問を呈しています。なぜなら、実際の市場での需要(実需)は、依然としてエンジン車やハイブリッド車が圧倒的だからです。メディアや政府が電気自動車(EV)への転換を強く促す一方で、消費者のニーズとの間に大きなズレが生じていると指摘します。メーカーはユーザーが求める車を作り、利益を上げることが本来の姿であり、イデオロギーを優先して現実を無視すべきではないという考えです。
町工場が支える「ものづくりの生態系」
日本の自動車産業の強みは、複雑なエンジンやトランスミッションを作る高度な技術にあります。ガソリン車には約3万点もの部品が使われており、それら一つひとつを全国の町工場が支えています。しかし、部品点数が少ないEVへの急激なシフトは、これらの中小企業の仕事を奪い、長年培ってきた「ものづくりの生態系」を破壊する恐れがあります。エンジンの設計や開発に人生を捧げてきた技術者たちが、将来に強い不安を感じている現状を、加藤氏は重く受け止めています。技術の継承が途絶えてしまえば、一度失われた日本の強みを取り戻すことは極めて困難になります。
エネルギー不足と再エネの限界
脱炭素を進める上で避けて通れないのがエネルギー問題です。政府は再生可能エネルギーの導入を進めていますが、加藤氏はその安定性に疑問を投げかけています。特に、AIの普及やデータセンターの増設により、今後の電力需要は爆発的に増えることが予想されます。一方で、2040年代には多くの原子力発電所が寿命を迎え、廃炉が進む可能性があります。太陽光や風力などの再エネだけでは、産業や国民生活を支える膨大な電力を賄うことはできません。電力の安定供給がなければ、国家の繁栄も豊かな暮らしも成り立たないという厳しい現実を直視する必要があります。
マルチパスウェイが切り拓く日本の未来
今後の展望として、加藤氏は「マルチパスウェイ(多様な選択肢)」の重要性を説いています。これは、カーボンニュートラルへの道をEVだけに絞るのではなく、ハイブリッド車や合成燃料(e-fuel)など、複数の技術を組み合わせて追求する考え方です。2030年頃には合成燃料の導入も期待されており、これが普及すれば既存のエンジン技術を活かしながら脱炭素を実現できます。自動車産業を「成熟産業」ではなく、常に進化し続ける「成長産業」と捉え、現実的なスピードで技術革新を進めることが、日本の雇用と技術を守り、世界での競争力を維持するための唯一の道と言えるでしょう。