2025-10-08 コメント投稿する ▼
赤沢経済再生相「核融合は最重要エネルギー」発言も批判 “掛け声だけ”のエネルギー政策に現場は冷ややか
しかし、国内では依然としてエネルギー政策全体の方向性が定まらず、「脱炭素」「原発再稼働」「再エネ促進」が並立する中で、核融合を“政治的スローガン”に利用しているだけではないかとの批判も根強い。 視察先となった京都フュージョニアリングは、京都大学の研究成果を基盤に設立された核融合関連企業で、磁場閉じ込め方式の炉心構造やプラズマ制御技術などで世界的に注目されている。
赤沢経済再生相「核融合は最重要エネルギー」 京都の先端企業を視察も、“掛け声だけ”との批判
赤沢亮正経済再生担当相は8日、京都大学発のベンチャー企業「京都フュージョニアリング」(本社・東京)を訪問し、核融合発電技術の開発現場を視察した。赤沢氏は記者団に「わが国をエネルギー制約から解放する最重要分野の一つ」と強調し、政府として核融合を次世代の基幹エネルギーとして位置づける考えを改めて示した。
しかし、国内では依然としてエネルギー政策全体の方向性が定まらず、「脱炭素」「原発再稼働」「再エネ促進」が並立する中で、核融合を“政治的スローガン”に利用しているだけではないかとの批判も根強い。
「技術立国」アピールの裏で進まぬ国家戦略
視察先となった京都フュージョニアリングは、京都大学の研究成果を基盤に設立された核融合関連企業で、磁場閉じ込め方式の炉心構造やプラズマ制御技術などで世界的に注目されている。
同社の小西哲之CEOは、「米国も日本の技術に強い関心を寄せている。日米連携による投資が実現すれば技術確立のスピードが加速する」と語った。
一方、赤沢氏は「日米の具体的な投資案件にするかどうかは検討中」と明言を避けた。この曖昧な姿勢に対し、経済界や研究者の間では「結局はまた“検討する”だけで終わるのではないか」と冷ややかな見方が広がっている。
政府はこれまで、再生可能エネルギー政策でも“官製ビジョン”を掲げながら実効性に欠け、現場の技術開発を後押しする制度設計が後手に回ってきた。核融合に関しても、国家戦略としての明確な優先順位や予算配分が見えないままだ。
日米協力に期待も、「利用されるだけ」との懸念
赤沢氏は今回の視察で「日米協力の拡大」を口にしたが、実際には米国の民間企業が日本の技術を取り込み、自国主導で開発を進めるケースが増えている。経済評論家の一人はこう指摘する。
日本は基礎研究の段階で突出した成果を挙げても、商用化の段階で海外に主導権を奪われてきた。核融合でも同じ構図になりかねない
政府が日米協力を進めるのであれば、単なる“技術供与国”にとどまらず、経済安全保障の観点から国益を守る体制を構築する必要がある。
2030年代の実用化は現実的か
京都フュージョニアリングは、カナダなど海外の研究機関と連携し、2030年代の技術確立を目指している。しかし、核融合発電は実験炉から商用炉への移行に巨額の投資と長期的な政策支援を要する。
赤沢氏は「国民の安全・安心を前提に進めたい」と述べたが、現状では安全基準、法整備、電力網との統合といった基盤整備がほとんど議論されていない。
また、開発の中心が民間企業や大学に委ねられ、国としての司令塔不在が続く。エネルギー政策の柱を核融合に据えるというなら、研究資金の一貫的支援、知財保護、インフラ整備を一体的に進める必要がある。
“未来エネルギー”を実現できるのは政治の責任
赤沢氏の言葉は一見前向きだが、実際には過去の政権でも同様の発言が繰り返されてきた。「水素社会」「再エネ立国」「カーボンニュートラル」──どれも掛け声ばかりで終わり、技術現場との連携が乏しい。
今回も、視察パフォーマンスで終わるようでは意味がない。
核融合発電は、理論上は環境負荷が小さく、資源制約を受けない“夢のエネルギー”だ。だが、夢を現実にするには、政治が本気で長期戦略を描く覚悟が求められる。
日本が再び「技術後進国」と揶揄されるのか、それとも未来を切り拓く国家になるのか。核融合の行方は、その覚悟を測るリトマス試験紙になるだろう。