シベリア抑留犠牲者「レゲスミタ」を「耳田」と特定、厚生労働省調査資料室の専門家集団が解読

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シベリア抑留犠牲者「レゲスミタ」を「耳田」と特定、厚生労働省調査資料室の専門家集団が解読

厚生労働省では、ロシア側から提供された資料を基に犠牲者の特定作業を続けていますが、その中には「レゲスミタ」と記された謎の日本人名がありました。 東京都千代田区霞が関の中央合同庁舎5号館4階で、パズルを解くような分析を重ねながら、80年前の記録から一人一人の犠牲者を突き止める専門家集団が日夜奮闘しています。 その成果として語り草になっているのが「レゲスミタ」と記された日本人犠牲者の事例です。

「レゲスミタ」は誰?旧ソ連抑留日本人犠牲者特定の専門家集団

第二次世界大戦後、旧ソ連に抑留された約57万5千人の日本人のうち、約6万人が極寒の地で命を落としました。厚生労働省では、ロシア側から提供された資料を基に犠牲者の特定作業を続けていますが、その中には「レゲスミタ」と記された謎の日本人名がありました。東京都千代田区霞が関の中央合同庁舎5号館4階で、パズルを解くような分析を重ねながら、80年前の記録から一人一人の犠牲者を突き止める専門家集団が日夜奮闘しています。

10人の専門チームが挑む「応用問題」


厚生労働省社会・援護局調査資料室の池田真之室長補佐は「特定しやすい抑留者の照合は終わり、今の作業は〝応用問題〟だ」と語ります。1991年にロシアから資料提供を受けて以来、これまでに4万人以上の犠牲者を特定しましたが、「保留案件」と呼ばれる未特定の犠牲者は約1万4千人にも上ります。

同室の調査係では、係長以下10人が特定作業や遺族との調整に従事しています。基本的な作業はロシア政府などの資料と日本側資料を突き合わせるというものですが、その困難さは想像を絶します。当時のソ連の混乱した状況が、80年を経た今でも調査を阻んでいるのです。

最新の公表では2025年11月7日に9人の身元が明らかにされました。厚生労働省は月1回程度のペースで特定済み犠牲者の氏名を公表しており、これまでにシベリア・モンゴル地域で4万966人、その他地域で1040人、計4万2006人の個人特定を完了しています。

「80年経ってもまだ見つからない家族がいるなんて」
「こんな地道な作業をしている人たちがいるんだ、頭が下がる」
「戦争の悲惨さを改めて感じる。二度と繰り返してはいけない」
「ロシアとの関係が悪化している今、こういう人道的な作業は大切」
「最後の一人まで見つけ出してほしい」


官僚国家の「悪しき一面」が困難を生む


ロシア側資料には、当時のソ連の体質を物語る奇妙な文書が数多く散見されます。犠牲者の文書に、当人と縁もゆかりもない日本の住所が記されているケースが典型例です。「監査の目をごまかすためではないか」と池田補佐は分析します。事実よりも書類を残すことを優先した結果、虚偽の記録が作成されたというのです。

当時のソ連では資材不足が深刻で、紙やペンに窮していました。そのため新聞紙の活字の上に記載された書類まで残されています。受け入れ段階で調書を取れないまま抑留者が死亡した場合でも、別人の調書から転記して体裁だけを整えたケースもあったと推察されます。

17年間にわたって特定作業を進めてきた古参係員は「書類を残すということへの執念を感じる」と語ります。これは官僚国家としての悪しき一面をのぞかせるエピソードでもあります。抑留者を管理する兵士の中には、人手不足もあって十分な教育を受けられていない者も含まれており、単語のつづり間違いも多いといいます。

筆記体との格闘が生んだ「レゲスミタ」解読


最も係員の頭を悩ませるのが筆記体での記述です。一般名詞であれば文脈から類推できますが、人名はそうではありません。同じ文字でもいくつもの表記パターンがあり、他の字との判別に苦心します。当時のソ連人兵士も判読に苦労していたようで、元資料から転記する際に間違えたとみられる記述が資料には散見されます。

こうした困難な読み解きで係員たちが武器にしているのが、十数年前に池田補佐が作成した「キリル文字筆記体一覧」という資料です。実際の資料から筆記体として使われた文字1760パターンを抽出して並べたもので、特定作業の重要なツールとなっています。

同じように文字を書いてみたり、一旦書き起こしたものを音読して語感から実際の記述を探ったりする方法も頻繁に使われます。その成果として語り草になっているのが「レゲスミタ」と記された日本人犠牲者の事例です。何度も書き直しや日本兵士の部隊行動履歴との突き合わせを重ねることで、「ミミタ(耳田)」という姓であることを突き止めました

遺族の感激が支える使命感


池田補佐は、ある遺族男性の体験を思い起こします。その男性の父親は子供の出産を見ることなく出征し、抑留死しました。「自分の妊娠すら知らなかったのではないか」と長年思っていた男性が老齢になって、厚労省から届いた父の文書の家族欄に自分の存在が記されていたことを知り、深く感激したのです。これもまた、調査係の成果の一つです。

このような遺族との出会いが、専門家集団の使命感を支えています。シベリア抑留では、スターリンが戦争による労働力不足を補うため、1945年8月に日本人将兵の抑留方針を決定しました。その後1956年に公式の帰還が完了するまでの11年間、飢えや寒さ、感染症で約6万人が死亡し、即決裁判によって処刑された抑留者の記録も残されています。

戦後80年が経過し、抑留者やその直系の遺族の高齢化が進む中、時間との競争でもあります。現在も約3万3000人の遺骨が現地にあるとされ、身元特定の重要性はますます高まっています。DNA鑑定による身元確認も進められていますが、2010年までに特定されたのは約828名に留まっています。

古参係員は「事実を知るためには、最後まで疑い続けることが大事。これからもそのための知見を他の職員に共有しながら、1人でも多く、1日でも早く特定を進めたい」と語りました。中央合同庁舎の一室で続けられるこの地道な作業は、戦争の記憶を風化させず、遺族に真実を届ける重要な使命を担っています。

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2025-11-11 10:02:53(植村)

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