2025-11-07 コメント投稿する ▼
旧ソ連抑留死者新たに9人判明、厚生労働省が身元特定し遺族に通知
厚生労働省の推計によると、約5万5000人が極寒の環境や過酷な労働により命を落としたとされています。 厚生労働省は1991年以降、ロシア連邦政府やモンゴル政府から提供された抑留中死亡者の名簿と日本側資料を照合し、死亡者の身元特定作業を継続しています。
特定されたのは宮城県の加藤誠治氏、福島県の村田芳一氏と鹿目誠士氏、長崎県の小道正彦氏、大阪府の村本省悟氏、北海道の三木次郎市氏、山形県の奥山鈴夫氏、長野県の関金次氏、岩手県の小原舜吉氏の9人です。これで抑留死亡者の特定はシベリア・モンゴル地域で4万1167人、その他地域で1040人となりました。
戦後80年を迎えても続く身元調査
シベリア抑留は第二次世界大戦終了時、旧満州や樺太、千島列島でソ連軍に拘束された日本兵や民間人約57万5000人が、シベリアやモンゴルなどの強制労働収容所に送られた出来事です。厚生労働省の推計によると、約5万5000人が極寒の環境や過酷な労働により命を落としたとされています。
厚生労働省は1991年以降、ロシア連邦政府やモンゴル政府から提供された抑留中死亡者の名簿と日本側資料を照合し、死亡者の身元特定作業を継続しています。遺族が親族の死亡経緯を確認できるように、2007年3月からホームページで氏名や死亡年月日などを掲載しており、身元が判明した場合は都道府県を通じて遺族に関連資料を提供しています。
「父の最期を知ることができて本当に良かった」
「戦後80年経っても調査を続けてくれてありがたい」
「もう生きている家族はいないけど、供養ができます」
「祖父の名前が見つかって涙が止まりません」
「せめて故郷で眠らせてあげたかった」
遺族への継続的な支援体制
今回特定された9人についても、厚生労働省は自治体を通じて遺族の調査を実施し、所在が判明した場合は名簿の記載内容をお知らせする予定です。提供される資料には、抑留者の氏名、生年月日、死亡年月日、埋葬場所などの情報が含まれています。
しかし、厚生労働省の推計する抑留中死亡者約5万3000人と比較すると、未だ約1万2000人分の名簿が提供されておらず、情報不足などにより約9000人が身元特定に至っていません。同省では、未特定者約2万1000人分の名簿をロシア政府に提供し、さらなる調査と資料提供を要請しています。
抑留者支援団体では、毎年8月23日を「シベリア抑留開始の日」として千鳥ヶ淵戦没者墓苑で追悼の集いを開催しており、遺族や関係者約150人が参加して犠牲者を追悼しています。また、舞鶴引揚記念館が収蔵する抑留資料は2015年にユネスコ「世界の記憶」として登録され、平和の尊さを伝える貴重な記録として保存されています。
平和への教訓として次世代に継承
シベリア抑留の実態解明は、単なる歴史的事実の確認にとどまらず、戦争がもたらす悲劇を風化させずに次世代に伝える重要な意味を持っています。極寒のシベリアで強制労働に従事し、故郷の土を踏むことなく命を落とした多くの日本人の記録は、平和の尊さを改めて認識させる貴重な教訓となっています。
厚生労働省は今後もロシア政府との協力関係を維持しながら、抑留に関する資料収集と分析を継続していく方針です。戦後80年という節目を迎えても、遺族からの相談に丁寧に対応し、一人でも多くの抑留死亡者の身元を明らかにする取り組みを続けています。
抑留者の高齢化が進み、体験者の証言を直接聞くことが困難になる中、こうした地道な調査活動は戦争の記憶を後世に継承する貴重な取り組みとして位置づけられています。今回の9人の身元特定も、長い時を経てようやく家族のもとに帰ることができた象徴的な出来事といえるでしょう。