2026-03-20 コメント投稿する ▼
26年サケ漁でロシアと妥結 漁獲枠・費用は前年踏襲
水産庁が20日に発表したところによりますと、2026年に日本の排他的経済水域(EEZ)内で、ロシアの川で生まれたサケ・マス類を漁獲する際の条件について、ロシア側との間で協議がまとまりました。
安定操業への道筋、日ロ交渉が妥結
日本の食卓に欠かせないサケ・マス類。その漁獲に関する2026年の操業条件について、ロシアとの間で長年続けられてきた交渉が、このほど最終的な合意に至りました。水産庁が20日に発表したところによりますと、2026年に日本の排他的経済水域(EEZ)内で、ロシアの川で生まれたサケ・マス類を漁獲する際の条件について、ロシア側との間で協議がまとまりました。
具体的には、来年の漁獲枠は2050トン、そしてロシアへ支払われる費用は1億8千万円から3億1300万円の範囲内と、いずれも前年と同水準の条件となりました。この条件が踏襲されたことで、日本の漁業関係者は、来シーズンの操業計画を立てやすくなったと言えるでしょう。毎年、この時期に行われる日ロ間の交渉は、日本のサケ・マス漁にとって極めて重要な意味を持つものであり、その結果が注目されていました。
国際法が根拠、サケの「母なる川」優先の原則
そもそも、なぜ日本はロシアとサケ・マス漁の条件について協議を行う必要があるのでしょうか。それは、サケ・マス類特有の生態と、それを規定する国際法に理由があります。これらの魚は、海で成長した後、必ず産卵のために自分が生まれた川へと戻ってくる習性を持っています。
この生態を踏まえ、1982年に採択された国連海洋法条約(UNCLOS)では、公海で漁獲されるサケ・マス類については、その資源が生まれた川のある国が、資源の管理や漁獲から得られる利益について、優先的な権利を有することが定められています。これは、資源の「母なる川」への感謝と、その故郷の国が資源管理に責任を持つべきだという考え方に基づくものです。
今回の交渉の背景には、この国際法が存在します。日本は、自国のEEZ(排他的経済水域)内で操業する際であっても、ロシア生まれのサケ・マス類については、ロシアの国際法上の権利を尊重し、漁獲枠や費用について協議を行う義務があるのです。先週17日からオンライン形式で集中的に行われた協議は、まさにこの国際法を前提とした、両国間の実務的な調整作業でした。
条件据え置きの意義と国民生活への影響
今回の交渉で、漁獲枠と費用が前年と同じ条件となったことは、日本の漁業経営にとって安定性を確保する上で大きな意味を持ちます。水産業は、資源の変動、漁場環境の変化、燃料価格の高騰、そして国際情勢の動向など、常に多くの不確実性に直面しています。このような状況下で、毎年、漁獲枠や操業費用が大きく変動するようなことがあれば、漁船の維持管理や新たな漁具への投資、さらには漁師の雇用確保といった経営判断に深刻な影響を与えかねません。
漁獲枠や費用が据え置かれたことで、漁業者は来シーズンの事業計画をより具体的に、そして着実に立てることが可能になります。これは、漁業資源の持続的な利用に向けた管理体制の強化や、漁業技術の向上への投資を促す効果も期待できます。資源管理への取り組みは、単に漁業者の努力だけでなく、安定した操業基盤があってこそ、その効果を発揮するものです。
さらに、サケ・マス類は、日本の国民にとって非常に身近で、消費量の多い魚種の一つです。これらの魚が安定的に漁獲され、食卓に届けられることは、国民の食料安全保障や食文化の維持という観点からも極めて重要です。今回の合意は、漁業関係者だけでなく、広く国民生活にも安心感を与えるものと言えるでしょう。
国益確保に向けた粘り強い外交の重要性
昨今の複雑化する国際情勢を鑑みると、今回の日ロ間の実務的な合意形成は、国益に関わる水産分野において、対立構造を抱えつつも、着実な協力関係を維持することの重要性を改めて浮き彫りにしました。ロシアによるウクライナ侵攻以降、日ロ関係は厳しい局面を迎えていますが、それでも、サケ・マス資源のような共通の利益に関わる分野では、冷静かつ建設的な対話が不可欠です。
今後も、サケ・マス資源の持続的な利用と適正な管理を両国で進めていくためには、科学的知見に基づいた情報共有と、緊密な連携を継続していくことが求められます。水産庁には、国際法を遵守しつつも、日本の漁業権益を最大限に確保するという強い意志を持って、ロシアとの交渉に臨み続けてほしいと考えます。
今回の交渉結果は、他の水産資源をめぐる国際交渉においても、一つの参考となるでしょう。日本の立場を国際社会でしっかりと主張し、国益を守り抜くためには、官民一体となった粘り強い外交努力が不可欠です。水産庁をはじめとする関係省庁には、国民の豊かな食生活と水産業の発展、そして国の安全保障にも資する、戦略的な水産外交を展開していくことを強く期待します。