2025-12-11 コメント: 1件 ▼
カキ大量死で鈴木憲和農水相が600万円融資発表 技能実習生1500人雇用維持も
瀬戸内海のカキ養殖業界が未曾有の危機に直面している。 瀬戸内海の広範囲で養殖カキの大量死が発生し、国内最大産地の広島県の一部海域では最大9割が死滅したことで、関連産業への影響が深刻化している。 三重や宮城県など他エリアの産地では大きな被害が確認されておらず、閉鎖海域である瀬戸内海に限って成育環境に異変が生じていることから、瀬戸内海特有の環境変化への対応策が急務となっている。
カキ大量死で史上初の危機
鈴木農林水産大臣が緊急支援パッケージ発表、600万円融資や技能実習生雇用維持も
瀬戸内海のカキ養殖業界が未曾有の危機に直面している。広島県を中心とした養殖カキの大量死問題を受け、鈴木憲和農林水産大臣(42)が2025年12月11日、事業者支援の政策パッケージを緊急発表した。全国生産量の8割を占める西日本の主要産地が壊滅的打撃を受ける中、国は異例の大規模支援に乗り出した。
前例なき大量死が瀬戸内海全域に拡大
広島県の聞き取り調査で、坂町の一部漁場では「全滅に近い」という深刻な被害が確認され、広島市では「9月に1割だったへい死が10月に5割に増加」、福山市では「10月中旬からさらに増えた」との状況が明らかになった。
水産庁による各県への調査で、中国、四国、関西地方の広域で例年と異なる被害が発生していることが判明した。被害は広島県内全域から兵庫県播磨灘、岡山県日生町へと拡大し、特に兵庫県播磨灘では例年2から5割の死滅率が今年は最大8割に達している。
9月の海水温が平年より表層で平均2.4度高く推移し、県中部と東部海域の多くの地点が高水温と高塩分の環境となり、カキが産卵後にへい死する水準になっていたことが原因として指摘されている。
現場では生産者の悲痛な声が上がっている。
「こんな全滅状態は初めて。いくら水揚げしても殻の中が空っぽでどうしようもない」
「資材費や人件費を準備できず、致命的だ」
「収入の見通しが立たない。この異常事態がいつまで続くのか」
「今まで何十年もやって、広島産の牡蠣がこんなにないのは初めて」
「死ぬ量が半端ではない。ここまで死んだのは初めて」
600万円融資と技能実習生雇用維持の緊急支援策
発表された政策パッケージの柱となるのは、被害を受けた養殖業者を対象とした資金繰り支援だ。600万円または年間経営費の半分を限度とする融資制度を新設し、地元自治体が被害を認定すれば5年間は実質無利子となる。加工や流通などの関連事業者向けの資金繰り支援も別途実施する。
特筆すべきは、瀬戸内海のカキ養殖場で働く海外からの技能実習生約1500人への雇用維持策だ。実習再開まで一時的に他の職種に就くことを認め、雇用の継続を図る。これまで技能実習制度では特定の職種に限定されていたが、今回の緊急措置により柔軟な運用が可能となった。
損害の数量に応じた共済による被害額の補填も実施し、生産施設の整備費補助なども含む包括的な支援体制を構築する。
経済損失は300億円規模、消費者価格への影響も
瀬戸内海の広範囲で養殖カキの大量死が発生し、国内最大産地の広島県の一部海域では最大9割が死滅したことで、関連産業への影響が深刻化している。
カキの卸・加工販売を手掛ける企業では「例年の半分以下しかカキが入ってこない」状況となっており、広島市内の水産加工会社では仕入れ価格が2から3割上昇し、入荷量は例年の半分ほどで、年末に向けて店頭価格が上がる可能性が高いと報告されている。
広島県の経済損失は300億円規模に達する見通しで、年末年始の需要期を前に消費者への価格転嫁は避けられない状況だ。農水省の調査では去年、広島県の牡蠣は全体の63%を占めており、日本の冬の食卓への影響は計り知れない。
気候変動への長期対策も視野
鈴木農水相は原因究明を進めるとともに、海洋環境の変化に対応した養殖業の推進を表明した。復興副大臣時代に宮城県気仙沼でカキ養殖の現場を視察した経験を持つ同氏は、海洋環境変化への技術的対応の重要性を強調している。
三重や宮城県など他エリアの産地では大きな被害が確認されておらず、閉鎖海域である瀬戸内海に限って成育環境に異変が生じていることから、瀬戸内海特有の環境変化への対応策が急務となっている。
今回の支援パッケージは、地域経済の基盤産業を守る緊急措置として評価される一方、根本的な気候変動対策の必要性も浮き彫りにした。瀬戸内海のカキ養殖業界は、伝統的な養殖技術の見直しを含む抜本的な構造改革を迫られている。