2025-12-05 コメント投稿する ▼
鈴木農水大臣がおこめ券に使用期限設定発表も自治体は配布拒否続出で破綻
この決定は、重点支援地方交付金を活用する自治体にとって、むしろ不利益しかもたらさない制度設計だと言わざるを得ない。 使用期限付きおこめ券の新規発行により、偽造防止の特殊加工に時間を要するため、短期間での大量発行は困難とされている。
使用期限付きおこめ券が自治体に不利益しかもたらさない理由
政府が物価高対策として推奨する「おこめ券」に、新たな問題が浮上している。鈴木憲和農林水産大臣が2025年12月5日の会見で、経済対策での配布予定のおこめ券に使用期限を設ける方針を正式に明らかにした。期限は2026年9月末までとする案が検討されており、従来の期限なしおこめ券とは異なる「臨時券」として新規発行される予定だ。
この決定は、重点支援地方交付金を活用する自治体にとって、むしろ不利益しかもたらさない制度設計だと言わざるを得ない。従来のおこめ券には期限がないという最大のメリットがあったにも関わらず、なぜ政府は自治体と住民にとって不利な条件を追加したのだろうか。
配布遅延と製造コスト増大の懸念
使用期限付きおこめ券の新規発行により、偽造防止の特殊加工に時間を要するため、短期間での大量発行は困難とされている。既存の券には使用期限がないため新規に発行することになるが、短期間に大量発行は難しいとの見方もあり、配布に遅れが生じないかが懸念材料となっている。
つまり、政府が期限設定を強要したことで、自治体は住民への迅速な支援提供ができなくなってしまった。物価高対策として緊急性を要するはずの支援が、制度設計の複雑化により遅延する可能性が高まっているのだ。
「おこめ券に期限つけるって、急いで使わなきゃならないプレッシャーかけてどうするの」
「期限付きって結局、国に返還させるための仕組みでしょ。住民のための支援じゃない」
「従来のお米券は期限なしが売りだったのに、なんで改悪するの?」
「自治体の負担増やして住民にも不便かけて、誰得なんだろう」
「配布遅れるなら意味ないじゃん。物価高対策なのに本末転倒」
経費率20%の衝撃と自治体の反発
大阪府交野市の山本景市長は「経費率が10%以上と高い」「今高い米をムリして買う必要はない」として、おこめ券配布を拒否している。市長によると、おこめ券の配布にかかる経費は約20%で、5億円の予算があっても1億円近くが経費で消えてしまうという深刻な問題が明らかになっている。
経済評論家の加谷珪一氏によると、10億円のおこめ券が配布された場合、12%は印刷コストなどとして発券団体へ行くため、実際に引き換えられるおこめ券は8億8000万円になり、さらに輸送コストなどに8000万円かかるため、10億8000万円の予算を使って8億8000万円分の支援になるとされている。
この非効率性に対して、自治体による実施のばらつきも問題で、配布するかどうかは国に強制力がなく、自治体ごとの判断に委ねられており、財政力の弱い自治体などでは実施が困難で、地域間の支援格差が生じる懸念も指摘されている。
農業団体への利益誘導という根本問題
おこめ券は1枚当たり60円が印刷費や手数料といわれており、配布されることになればJA全農か全米販に入る。鈴木大臣は農水省出身の農水族議員であり、利権が絡んでいるのではないかと見る向きがあるという指摘も存在する。
券の配布は一時的な家計支援にすぎず、供給不足や流通構造の問題、減反政策の見直しなど、コメ問題に対する本質的な課題解決にはならない。むしろ需要を刺激し、さらなる価格上昇を招くリスクもある。
政府が推奨する重点支援地方交付金2兆円のうち4000億円をおこめ券などの活用を促す特別枠として設定しているが、これは本来、物価高に苦しむ住民への直接支援に使われるべき予算だ。それが農業団体への手数料支払いに消えていく構造は、政策の目的と手段が完全に逆転していると言わざるを得ない。
自治体は代替手段を選択すべき
交野市が受領される予定の約5億円の重点支援地方交付金の使い道について、「経費率が約1%の上下水道基本料金免除や経費のかからない給食無償化に充てたい」という方針は、まさに住民本位の合理的判断だ。
使用期限付きおこめ券は、配布遅延リスク、高い経費率、農業団体への利益誘導、住民への利便性悪化という四重苦を自治体に押し付ける制度設計だ。各自治体は、この不利益しかないおこめ券ではなく、水道料金減免、給食費無償化、電子クーポンなど、住民に直接的で効率的な支援を提供する代替手段を積極的に選択すべきである。