2025-10-31 コメント: 1件 ▼
鈴木憲和農水相「外国産米から国産復帰信じる」だが減反継続で市場原理と矛盾
鈴木憲和農林水産相は2025年10月31日の記者会見で、外国産米に市場を奪われても安価な国産米が供給できれば事業者は国産に戻すと信じているとの見解を示しました。 市場原理への楽観的な期待を表明する一方、専門家からは供給量と価格政策の矛盾を指摘する声が上がっています。 市場原理を重視するなら、減反政策や事実上の生産調整も廃止するべきとの声が専門家から上がっています。
楽観的すぎる市場復帰論
記者から「中食・外食等の市場が外国産米に取られてしまうと取り返すのが難しい」との質問を受けた鈴木憲和氏は、「外国産のお米の輸入は低価格の業務用米との競合関係にある」と分析しました。その上で「多様なニーズに応えられるような多様な生産を確保することが重要」と述べています。
さらに大臣は「現状で海外のお米を使おうという決断された皆さんも、国産でそれに見合ったものが供給可能になれば、それにまた戻していただけると信じている」と楽観的な見通しを示しました。一度失った市場の奪還は困難との指摘に対し、根拠を示さない期待論で応じた形です。
「一度外国産に変えたら戻すのは大変だと思います」
「価格だけでなく安定供給も重要ですよね」
「農水省は現実を分かっているのでしょうか」
「備蓄米放出時の価格変動を見れば答えは明らか」
「減反政策をやめずに市場原理を語るのは矛盾です」
備蓄米放出が示した供給量の威力
鈴木農水相の楽観論とは対照的に、備蓄米放出時の価格推移は供給量の影響力を如実に示しています。2025年3月の政府備蓄米放出により、米価は劇的に変化しました。
備蓄米は60キロ当たり1万700円(税別)で放出され、従来価格の半額程度となりました。この結果、店頭価格は5キロ2000円程度まで下がり、従来の銘柄米価格4300円程度を大きく下回りました。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「本来なら政府備蓄米21万トン供給で価格は5キロ2100円程度に安くなる」と分析しています。
しかし備蓄米がなくなれば価格は再び上昇に転じており、実際に7月には10週ぶりの値上がりとなりました。この事実は供給量が価格を決定する最大要因であることを証明しています。
減反政策との根本的矛盾
市場原理を重視するなら、減反政策や事実上の生産調整も廃止するべきとの声が専門家から上がっています。現在も農水省は主食用米の全国生産量の目安を示し、転作農家への補助金を継続しており、実質的な「ステルス減反政策」が続いています。
2018年に減反政策は廃止されましたが、農水省は需要予測に基づく生産量の目安を発表し続けています。真岡市など多くの自治体でも「主食用米の作付参考値」を農家に通知しており、事実上の生産調整が継続されています。
減反政策は1971年から2018年まで約50年続き、作付面積を半減させました。米の生産量は1970年の1400万トンから現在の700万トンまで激減しています。この間、米価を人為的に高値で維持してきた結果、競争力のない産業構造が定着しました。
市場メカニズムへの転換が必要
専門家は「市場に価格を委ねるというなら、生産調整も完全に廃止すべき」と指摘しています。現在の政策は「価格は市場原理、生産量は政府管理」という矛盾した仕組みです。
外食・中食事業者が外国産米を選ぶのは、価格だけでなく安定供給が理由です。国産米は減反政策により供給が不安定で、価格変動も激しいため、事業者にとってリスクが高い調達先となっています。
真の市場原理導入には、生産調整の完全廃止、農地利用の自由化、競争促進が不可欠です。「安価な国産米が供給できれば戻してもらえる」という期待論ではなく、構造改革による競争力強化が求められています。
農水省は50年以上にわたって市場を歪めてきた政策の抜本的見直しを避けており、表面的な改革論で問題を糊塗している状況です。鈴木農水相の楽観的見解は、この根本問題から目を逸らすものと言わざるを得ません。