2025-10-31 コメント投稿する ▼
スルメイカ小型船の操業停止、漁業者が廃業危機 不公平な資源管理制度に批判
スルメイカ漁の「異例の豊漁」が、小型漁船の漁業者たちに対して予期しない打撃をもたらしています。 鈴木憲和農林水産大臣は2025年10月31日の閣議後会見で、小型漁船によるスルメイカ釣り漁が漁獲可能枠の4900トンを上回ったことから、水産庁が採捕停止命令を発出すると明らかにしました。 この不公平な資源管理制度に対し、漁業関係者から強い憤りの声が上がっています。
スルメイカ漁の「異例の豊漁」が、小型漁船の漁業者たちに対して予期しない打撃をもたらしています。鈴木憲和農林水産大臣は2025年10月31日の閣議後会見で、小型漁船によるスルメイカ釣り漁が漁獲可能枠の4900トンを上回ったことから、水産庁が採捕停止命令を発出すると明らかにしました。停止期間は2026年3月末までの約5ヶ月間に及びます。1990年代に漁獲可能枠の制度を導入して以来、スルメイカ漁で操業停止を命じるのは初めてとなります。一方で、中型漁船や底引き網漁など他の漁法の枠は上限に達していないため、これらの漁法は継続されます。この不公平な資源管理制度に対し、漁業関係者から強い憤りの声が上がっています。
2025年度に小型イカ釣り船に割り当てられた漁獲可能枠は4900トンでしたが、10月15日の時点で既に5844トン(実績5300トン以上)に達し、枠を大きく超過しました。この事態に対し、全国の小型イカ釣り漁業者でつくる「北海道いか釣漁業協会」は10月22日から自主休漁を決定。水産庁もこれに続き、10月末付で採捕停止命令を発出する運びとなったのです。しかし、この決定は、近年の不漁で苦しんできた小型漁船の漁業者たちに計り知れぬ苦しみをもたらしています。
停止命令の影響は極めて深刻です。北海道の小型イカ釣漁業協議会の関係者は「この時期にもう操業できないのであれば、来春までできない。ここ数年・3~4年も不漁が続いて、いざやっと何とかなりそうだという矢先にこうした事態になった」と、苦境を訴えています。
山形県の小型いか釣漁業協議会の会長も、より直線的に現実を述べています。「操業が止まったら廃業する人の方が多いと思う。何とかわずかでもいいから操業できる形にしてもらいたい。操業しないと全国の消費者にも鮮魚・生のイカが並ばない状態が続く。来年3月、4月まで生のイカが完全にストップしてしまう」と語っています。
「不漁の時もあれば豊漁の時もある。なぜ豊漁だからといって突然停止命令なのか」
「3~4年の不漁でようやく回復しているのに、この仕打ちは何か。漁業者の人生を考えたことがあるのか」
「中型船や底引き網漁はそのまま操業を続ける。なぜ小型船だけが止められるのか。不公平さが許せない」
「国からの補償もなく、廃業する漁業者がたくさん出るだろう。日本の漁業を壊すつもりか」
「函館の文化、生活が支えられているのはスルメイカだ。国は地域経済を完全に無視している」
漁獲枠配分の根本的な制度欠陥
この問題の根本には、全国統一的な漁獲可能枠(TAC)配分制度の欠陥があります。小型スルメイカ釣り船の漁獲量は、北上するイカを捕獲するため地域差が大きく出ます。北海道は特にスルメイカ漁の中心地であり、古来より漁獲量が多い地域です。しかし現在の制度では、こうした地域特性や歴史的な漁場利用が十分に考慮されていません。
北海道函館市の大泉潤市長は「漁師だけではなく、いけすイカといった独特の食文化もあり死活問題だ」と指摘し、「TAC(漁獲可能量)の上限がくるとの感覚を漁師はほとんどもっていなかった」と述べました。これは、全国統一的な枠配分制度が現場の実態と乖離していることを示しています。市長はさらに「地域できめ細かく管理することは難しく、不公平感が出ない環境をつくってほしい」と、制度の抜本的改善を求めています。
豊漁の恩恵と規制のちぐはぐさ
異例なのは、スルメイカの漁獲が豊漁であるにもかかわらず、特定の漁法だけが操業停止を余儀なくされるという点です。鈴木農水相は「他の漁法向けの漁獲猶予枠から同漁にTACを配分するよう調整し、合意できれば速やかに増枠する」と述べ、11月5日の水産政策審議会で決定する方向を示しています。しかし、この対応の遅さと不透明さが問題なのです。
豊漁が判明しているのであれば、より迅速に枠を調整し、複数の漁法による均衡的な利用方法を検討すべきでした。代わりに、国は一方的に小型船だけを停止させてしまったのです。その結果、消費者には「生のスルメイカが市場から消える」という事態まで招いています。
漁業者への経済的支援の不在
最も重大な問題は、国が補償案を示さないままに漁業者を操業停止に追い込んでいることです。山形県の漁業協議会会長は「国からの補償を含め検討してほしい」と切実に訴えており、北海道の漁業者も同様の声を上げています。
不漁で3~4年苦しんだ漁業者たちが、やっと回復の兆しを見せたところで、突然の停止命令と補償なしという状況は、漁業という産業に対する国の姿勢の問題を露呈させています。漁業を持続可能な産業にするのであれば、資源管理と同時に、そこで生活する漁業者の生活保障も社会的責任として果たすべきです。
全国漁業への悪しき先例となる危険性
この決定は、今後の日本漁業全体に悪い影響をもたらす可能性があります。豊漁で実績が枠を超える都度、操業停止を命じるという前例ができれば、漁業者は枠内での操業を徹底する一方で、資源が豊富な時期であっても活用できなくなるという矛盾が生じます。結果として、漁業経営は不安定化し、新規就業者も減少するでしょう。
漁業は、日本の食料安保と地域経済を支える産業です。水産庁は短期的な資源管理の数字だけで判断するのではなく、地域経済、漁業者の人生、消費者の食卓までを視野に入れた、より柔軟で公平な制度設計を急ぐべき段階にあります。現在の状況は、国による漁業経営の不安定化に他ならず、日本漁業の衰退を加速させるものに他なりません。