2025-10-22 コメント: 2件 ▼
鈴木憲和農水相がコメ増産を軌道修正、61万トン備蓄米放出で需給逼迫は明らか
農水省は需要量について2025年は674万トン、2026年は663万トンに減少していくと見通していますが、実際の2023年産の需要量は当初の680万トン程度という推計に対して、最終的には705万トンにまで拡大しました。
「需要に応じた生産」を強調する鈴木農水相
鈴木氏は就任会見で「需要に応じた生産が原則であり基本。安心して先を見通せる農政を実現していく」として、生産農家が継続してコメ作りに臨める環境が重要だと述べました。
質疑でコメ増産の見直しなのか問われると、「見直すと捉えるのであれば見直しになると思う」と発言しました。コメの輸出促進を掲げて「中長期で必ず需要が増えていく。こういう世界を作っていきたい」と述べましたが、現在の深刻な国内需給の逼迫には具体的な対策を示しませんでした。
米価高騰対策としての備蓄米放出について「価格にコミットするのは、政府の立場ですべきではない」と否定しました。あくまで供給不足対策だとして「需要を見誤り、機動的な備蓄米放出ができなかったことは二度しない決意だ」と省みましたが、その反省が今後の政策にどう生かされるかは不透明です。
鈴木氏は元農水省官僚で、衆院山形2区選出の当選5回です。外務政務官、党青年局長を歴任し、石破前政権では農水副大臣を務めていました。
「需要に応じた生産って、今まさに需要に追いついてないじゃないか」
「備蓄米を大量放出しておいて需給は適正とか、何を言ってるんだ」
「増産から後退するなんて、農水省の失政を認めたくないだけだろ」
「コメ不足で国民が困ってるのに、役人的な言い訳ばかり」
「鈴木大臣、元農水官僚なら現場の実態を分かってるはずなのに」
2025年度に61万トンの備蓄米を放出
2024年から2025年にかけて、日本は深刻なコメ不足に見舞われました。2023年産米は猛暑の影響で品質が低下し、一等米比率が48%から37%に急落しました。さらに2024年産米も生産量の回復が不十分で、民間在庫は前年同月比で40万トン以上減少する事態となりました。
この結果、政府は2025年2月から合計61万トンもの備蓄米を放出せざるを得なくなりました。江藤拓前農水相時代の2025年4月までに31万トンの放出が決まり、小泉進次郎前農水相はさらに30万トンの追加放出を決定しました。
備蓄米100万トンは、日本の年間コメ消費量約700万から750万トンの約2か月分に相当します。そのうち61万トンを放出したことは、日本のコメ需給が極めて深刻な状態にあったことを如実に示しています。
政府は1993年の平成のコメ騒動を教訓に、10年に1度の不作や2年連続の通常不作が発生しても国民に安定的に供給できる体制として100万トンの備蓄を維持してきました。しかし今回の大量放出により、備蓄米は約40万トンまで減少し、食料安全保障上の懸念が高まっています。
農水省の需給見通しが大きく外れた
今回のコメ不足の根本原因は、農水省の需給見通しが大きく外れたことにあります。農水省は2024年産米の収穫量が前年比プラス18万トンだったことから、一貫して「コメは足りている」との姿勢を維持してきました。
しかし実際には、2023年産米の猛暑による品質低下の影響を十分考慮せず、生産量を大きく見積もったため、消費量を大きく推計してしまいました。また2024年産米の生産量679万トンには、本来別枠で確保すべき備蓄米20万トンも含まれており、実質の生産量は約660万トン程度しかありませんでした。
農水省は需要量について2025年は674万トン、2026年は663万トンに減少していくと見通していますが、実際の2023年産の需要量は当初の680万トン程度という推計に対して、最終的には705万トンにまで拡大しました。この実績を考えれば、農水省の需給見通しがいかに甘いかは明らかです。
さらに農水省は、集荷量が前年比21万トン減少したにもかかわらず生産量は18万トン増えたと主張し、差し引き39万トン分が所在不明と説明しました。この「消えたコメ」説は、コメ業界から「生産量自体が減っているのではないか」との指摘を受け、農水省の需給管理能力に対する信頼を大きく損ねました。
増産こそが唯一の解決策
現在、必要な備蓄米が60万トンも不足しています。どこかで早急に、この60万トンを取り戻して備蓄米を積み増す必要があります。2025年産だけでは、到底この分を積み増せる状況にありません。
最も重要なのは「2026年産の準備に早急に取り掛かること」です。2024年8月からコメの価格が上昇し始めましたが、本当に価格が上昇したのは秋以降でした。そのタイミングでの準備では翌年の2025年の作付けには間に合わず、2025年産において多くの地域・農業経営体では思ったほどの増産ができませんでした。
すでに新しい基本計画の中でもコメの増産方針が打ち出されていましたが、鈴木農水相が「需要に応じた生産」を繰り返し強調し、増産から事実上後退したことは、農水省が自らの需給見通しの失敗を認めたくないだけと受け止められても仕方がありません。
石破前政権下で小泉進次郎前農水相は「需要に応じた『増産』」と明言していました。現状の米価は高止まりしており、急激に増産が進めば供給過多による下落も懸念されますが、それ以上に深刻なのは、国民の主食であるコメが安定的に供給されていないという事実です。
鈴木農水相には、農水省の需給管理能力を抜本的に見直し、生産農家が安心して増産に取り組める環境を整備する責任があります。「需要に応じた生産」という官僚的な言い回しで問題を先送りするのではなく、現在の深刻な需給逼迫を直視し、思い切った増産支援策を打ち出すべきです。