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『すべての人にベーシック・サービスを保障』
暮らしの安心を保障するのは、医療、介護、教育、保育、障がい者福祉、住宅などのベーシック・サービス(現物給付)である。医療や介護、教育にかかるお金の不安が過剰な貯蓄につながり、個人金融資産が2000兆円を超える現状を招いている。
金融資産のかなりの部分は高齢者が保有している。自分が何歳まで生きるかはわからない。「人生百年時代」といわれ、百歳近くまで自己責任で生きることを前提に貯蓄に励み、実際にはそれ以前に亡くなる例が大半で、多額の遺産相続が発生している。医療や介護の自己負担と不安が軽くなれば、貯蓄のかなりの部分は消費に回る。子育て世帯は、大学授業料が無償化され教育費負担が軽減されれば、消費に回せるお金が増える。ベーシック・サービスの無償化や自己負担軽減は、結果的に消費を活性化する。
すべての人にベーシック・サービスを保障することで、所得格差による社会の分断を防ぎ、だれもが尊厳を持って生きられる社会を実現できる。その際、普遍主義の原則に立ち、所得の多寡によって利用できるベーシック・サービスに差を設けないことが重要である。中高所得者も受益を実感でき、高齢者も子育て世帯も単身世帯もすべての人が安心できる持続可能な社会保障制度を築く。ベーシック・サービスの充実によって、「弱者を救済する」より、むしろ「弱者を生まない」セーフティーネットを整備し、格差を生まない社会をめざす。
ベーシック・サービスに関しては、医療、介護、障がい者福祉、保育などのタテ割り行政の壁を越え、一人ひとりの暮らしに寄りそい、人生をライフステージごとにトータルで支える社会をつくる。申請が上がるまで「待つ」行政ではなく、専門職のソーシャルワーカーや地域のNPOや自治会と連携し、DXで申請漏れを防ぎ、必要な支援を必要なタイミングでスムーズに提供できる行政を整備する。ベーシック・サービスの大半は好き好んで利用するわけではなく、必要に応じて利用するものであり、さまざまなベーシック・サービスを同時に利用せざるを得ない人に過剰な負担を課すべきではない。社会保障サービスの自己負担の合計額について、所得に応じて上限を設ける「総合合算制度」を速やかに導入する。
介護、医療、保育、教育、障がい者福祉などの「ケアサービス(対人サービス)」は、労働集約的であるため雇用創出効果も高く、乗数効果も高い。ソーシャルワーカーなどの福祉の現場を支える人員の増員も必要である。今後も増える「ケアサービス」労働者が、新たな中間層のコアとなれるよう処遇を改善する。
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