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『分断社会を終わらせる調和の政治』
日本社会はさまざまな理由で分断されている。所得格差による分断、インターネットのアルゴリズムが作り出す情報の分断、教育や学歴による分断、世代間の分断、都市と農村の分断などでバラバラになった日本社会に調和をもたらし、持続可能な社会を創り出す政治が求められている。
競争を神聖視する新自由主義的な考え方は、経済だけではなく、政治や教育といった分野にまで広がった。協調や協働よりも競争を重視する価値観は、敵と味方に分けて声高に罵り合う政治スタイルを生み、冷静な対話や事実と論理に基づく熟議よりも、短くて歯切れのよいキャッチコピーで政治が動く状況を招いた。世界で蔓延するポピュリズム政治は日本にも広がり、長期的な持続可能性を無視した政策が採用されてきた。政治に対するシニシズムとあきらめが広がり、投票率は低下し、地方分権は後退し、若者の政治参加は低調で、議員に占める女性の割合も低いままである。多くの国民が政治は国民から遠いところにあると感じている。
政治の劣化、法治国家としての機能不全も甚だしい。機能する民主主義には、嘘をつかない誠実な公務員、政治の圧力に屈しない公正な裁判官や検察官、権力を私利私欲や党利党略に濫用しない政治家が不可欠である。しかし、政治の緊張感が失われ、権力の濫用を国会やメディアが十分に監視できない状況に陥っている。立法・行政・司法の三権のチェック・アンド・バランスが機能せず、国会での虚偽答弁や公文書の改ざん、検察人事への政治介入などの問題を引き起こした。国会の行政監視機能を強化し、報道の自由を尊重し、情報公開を徹底して、政治への信頼を回復しなくてはならない。
健全な民主主義には多様な意見と慎重な議論が不可欠である。少数意見を排除することなく、時間をかけて丁寧な議論ができる理性的な政治をめざす。また複雑な社会問題を過度に単純化して短絡的な答えに飛びつくことなく、科学的なデータや専門知を踏まえた冷静で慎重な政策論議が必要だ。
学問の自由や大学の自治を尊重し、政治と学術が適切な緊張関係と協力関係を保つことも大切である。その上で科学的知見やファクト、専門知に基礎を置く政策立案を行う必要がある。市民社会の多様な意見や弱い立場の人たちの声を政治に反映させるため、パブリックコメントなど選挙以外の市民参加の機会を広げることも大切だ。政治への信頼を回復するため、たとえばオランダの経済分析局のような中立的な独立財政機関を設置し、政党の選挙公約の財政的インパクトや財源、政策効果を評価することも有効だろう。
地方自治は民主主義の学校といわれるが、中央集権的な政治システムが民主主義の劣化と政治へのあきらめを招いているのではないだろうか。中央集権的な行財政の仕組みを変え、地方分権を再び政治のテーマにしなくてはならない。福祉や教育は地域ごとの違いが大きく、中央政府が一元的にサービスを提供するよりも、地方自治体が地域の実情に応じてサービスを提供する方が柔軟で効率的である。特にベーシック・サービスの拡充にあたっては、地方自治体への権限と財源の移譲が重要である。
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