2025-10-30 コメント投稿する ▼
千葉・鴨川メガソーラー許可条件違反で工事中止、森林法違反により初の厳格指導
千葉県鴨川市で造成工事が進む大規模太陽光発電施設(メガソーラー)について、県は30日、事業者が本来伐採すべきではない「残置森林」区域の樹木を伐採していたことが判明し、森林法に基づく林地開発行為の許可条件に違反するとして行政指導したと発表した。
環境破壊で住民不安
千葉・鴨川メガソーラー違反伐採で工事中止 森林法違反が初の厳しい行政指導
千葉県鴨川市で造成工事が進む大規模太陽光発電施設(メガソーラー)について、県は30日、事業者が本来伐採すべきではない「残置森林」区域の樹木を伐採していたことが判明し、森林法に基づく林地開発行為の許可条件に違反するとして行政指導したと発表した。違反状況が解消される原状回復まで工事の全面的な一時中止も指導したこと が初めてであり、県による厳しい態度の変化を示している。
許可条件違反が明らかに
県によると、事業者は「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」(鴨川市)。10月28日に県職員が現地に入り、許可条件に反する伐採(計1・5ヘクタール)を確認した。事業者は「誤って伐採した」と認めており、ホームページ上で工事の一時中止を発表した。森林法に基づく林地開発許可制度では、事業区域内の周辺部に一定の幅以上の残置森林を配置することが許可条件となっている。同メガソーラー計画では、周辺環境の保全と災害防止のため、残置森林の維持が厳格に求められていた 。
「誤ってって…こんなに大量の木を切っといて言い訳がましい」
「熱海の土石流を思い出す。山の木を全部切ったらどうなるか」
「原状回復できるのか。植林だけで本当に大丈夫?」
「県がようやく厳しくなった。住民の声が届いてよかった」
「メガソーラーは賛成だけど、環境破壊はダメ。きちんと管理してほしい」
熊谷俊人知事は30日の記者会見で「誠に遺憾だ。原状復帰など厳しくみていきたい」と述べた。県は行政指導を通じて他の区域で許可条件に反する伐採の有無とともに、植林による原状復帰に向けた計画の提出を事業者に求めている 。
森林法上の厳しい許可条件
森林法に基づく林地開発行為は、1ヘクタール(太陽光発電設備設置の場合は0・5ヘクタール)を超える森林伐採に都道府県知事の許可が必要な制度である。太陽光発電施設の許可基準では、事業区域内の森林率をおおむね25パーセント以上保つこと、周辺部におおむね30メートル以上の幅の残置森林を配置すること、尾根部については原則として残置森林を配置することなどが定められている。残置森林の厳格な維持は、水源かん養、土砂流出防止、環境保全という森林の公益的機能を守るため不可欠な要件 である。
盛土規制法との兼ね合いで工事再開時期不明
このメガソーラー計画は、森林法だけでなく盛土規制法による規制の対象でもある。県は24日、盛土の形状など計画変更を想定し、盛土規制法に基づく変更内容の報告を事業者に求めた。安全対策が確認されるまでは一部を除き工事の一時停止も要請していた。今回の森林法違反による工事中止指導は、盛土規制法に基づく要請よりも強制力を持つ行政指導であり、許可条件違反に対する最終段階は森林法に基づく中止命令といった厳しい措置に発展する可能性がある 。
地元住民の懸念と行政の対応
鴨川市のメガソーラー計画は、事業地約250ヘクタール、森林伐採面積約150ヘクタール、約37万本の樹木伐採、約40万枚のパネル設置という全国でも類を見ない超大型規模である。地元住民団体「鴨川の山と川と海を守る会」は、大量の伐採木が斜面や谷筋に散乱する状況を懸念し、台風シーズンの土石流災害の可能性を指摘してきた。県は2023年3月から58回の行政指導を行い、熊谷知事も9月下旬に、環境保全と災害防止の観点から県庁内に担当課による連絡会議を設置するよう指示している。
工事再開時期は盛土規制法との兼ね合いもあり、現時点では見通せない状況である。県による今回の厳しい行政指導は、大規模開発における環境保全と安全性を重視する行政判断の転換を示す。今後のメガソーラー開発案件に対する許可基準の厳格化につながる可能性も指摘されている。